ここは「ピルとのつきあい方」旧バージョンの保存ページです。
「ピルとのつきあい方」は1999年に開設されたピルに関するホームページで、
経口避妊薬ピル導入期の日本で貴重な情報源として利用されてきました。
当サイトをオリジンとする情報も少なくありません。
たとえば、緊急避妊に関する情報は当サイトによって広まりましたし、
「飛ばし飲み」も当サイトが用いた用語です。
旧バージョンの内容は基本的に現在でも通用する内容ですが、
ピルの利用環境が変化しましたので、
リニューアル版に移行します。
「ピルとのつきあい方」を模したサイトや換骨奪胎サイトが存在しますので、
オリジナルバージョンを保存しておきます。

「ピルとのつきあい方」リニューアルバージョンはこちらです。

 
反ピル論の検討
ピルとのつきあい方(表紙)ピルとのつきあい方(サイトマップ)

 新薬学研究者技術者集団(略称シグマ、以下シグマとする)は、40年余にわたって「国民の命と健康を守る新しい薬学の創造」をめざして活動してきた薬学の専門家の集まりです。その機関誌『新しい薬学をめざして』に近藤和子氏の「低用量ピルの危険性」と題する投稿が掲載されました。シグマホームページの「妊婦とホルモン剤」ページ上に、シグマが厚生省に提出した要望書等と並んで近藤論文が掲げられていました。いわば、近藤論文はシグマの公式見解に準じる位置づけが与えられていたように思えます。
 「国民の命と健康を守る新しい薬学の創造」をめざす団体の機関誌で、「低用量ピルの危険性」を強調する反ピル団体と同じ論理が展開される状況は、日本のピル認識の現状を反映しているように思えます。
 そこで、近藤論文の各論点について、私の見解を順次述べていくことにします。青字が近藤論文。
 なお、近藤氏にはこのページについてお知らせしております。反論等を戴けばご紹介いたします。

これのでの経緯(new)
【1】英国での低用量ピルに関連した死亡と集団訴訟
"A Consumer's Guide to the Pill and other Drugs"(2nd ed.)1997について
【2】副作用における厚生省報告の問題点(1)血栓症
【2】副作用における厚生省報告の問題点(2)乳癌発症の年齢別リスク
【2】副作用における厚生省報告の問題点(3)子宮頚癌のリスク(new)
【2】副作用における厚生省報告の問題点(4)ピルの免疫機能に及ぽす影響(new)
【2】副作用における厚生省報告の問題点(5)次世代への影響(工事中)
【2】副作用における厚生省報告の問題点(6)副効用(工事中)
【3】日本の臨床試験における問題点(工事中)
【4】内分泌攪乱物質としての問題点(工事中)
国民のための薬学はいかにあるべきか(工事中)
このページに寄せられたご意見
 

これのでの経緯

新薬学研究者技術者集団のホームページの掲示板に、私は以下の投稿をいたしました(現在は全て削除されています)。

貴会の目指している理念や活動については、承知しているつもりでおりました。
ところが、思いがけず貴会が低用量ピルに反対していることを知り、
驚いております。
私としては、にわかに信じがたいものがあります。
まず、確認したいことがあります。
「低用量ピルの危険性」と題する近藤和子氏の論文が機関誌1999.vol1に掲載されておりますが、これは貴会としての見解の表明と受け取ってよいのでしょうか?
上記論文中には、「個人的には」との記述もある一方、「正確なリスク情報を伝えていくことが重要である」とも書かれております。
実際、貴会について反ピル活動を展開している団体と紹介されていることもあります。貴会のご見解を承りたく存じます。
貴会は「国民の生命と健康を守る立場に立って」活動してきた輝かしい歴史があります。ピルの使用に反対することが、はたして「国民の生命と健康を守る立場」なのでしょうか?
低用量ピルは権益擁護のために反対する人々のために長年認可されませんでした。
現在でも年間70万件の中絶が行われ(公式発表は30万件余)、
このことにより多くの女性が心身の健康を損ねています。
貴会はこの事実をどのように受け止めているのでしょうか?
300万人ともいわれる子宮内膜症患者がいます。
諸外国では低用量ピルが子宮内膜症患者の治療に広く使われています。
ところが、日本ではピルに反対する人々の画策でピルの使用は困難な状況にあります。そのため、非常に副作用の強い治療法が行われています。
このことは少なくとも結果的に、一部の製薬会社の利益につながっています。
「大手製薬企業や医療器機メーカーの支配ならびに健康保険制度の不備のもとで」おきているこのような健康被害に立ち向かうのが、貴会の理念と理解していましたが誤解していたのでしょうか?
「実践のなかで現実を正しく分析する方法論の確立をめざします。」とは、貴会の「活動趣旨」です。上記近藤論文を読むと、歪曲された情報の受け売りのように思えてなりません。
たとえば、イギリスの事例が示されています。イギリスのピルユーザーは日本の約5倍です(150万人)。イギリスでは4年間に50人の死亡事例があるとのことですが、日本で4年間に10人の死亡事例が報告されているでしょうか(同比率で死亡者が出るとして計算した場合)?中用量ピル主体の日本において、死亡事例は1件も報告されていません。これは「現実を正しく分析する方法論」によって導かれた結論なのでしょうか?
私は貴会が「国民の生命と健康を守る」という原点に立ち戻り、
低用量ピルについての正しい認識形成に貢献して下さることを心から願っています。

これに対して近藤氏から以下の回答がありました。
Ruriko 様

まず、この回答及び過去の機関紙掲載の記事に関しては、全て私の個人的な見解です。

私たちが個々に得た薬のリスク情報は、貴女のおっしゃるように、「国民の生命と健康を守る立場に立った」薬剤師として、その科学性などを個人的に判断して機関紙に掲載しています。

貴女の発言要旨については、以下の3点にまとめてお返事したいと思います。

1、 低用量ピルの認可に反対して運動をしたのかどうか?個人又は集団として
2、 子宮内膜症患者に健康保険で、低用量ピルを使用できない問題点
3、 現在海外で使用されている薬の副作用事例を紹介して、リスクを伝えることは情報の歪曲か?

1、 については、私も集団としても、ピルそのものの認可には反対しておりません。

処方される場合、使用する女性にはどのようなリスクがあるのかを正確に伝えられると共に、避妊については様々な方法が提供されることが必要でしょう。

わが国のように水その他の衛生状態が、開発途上国とはくらべものにならないくらい安全であることを考えれば、個々の女性のニーズに沿って、女性にとってはリスクが少なく、男女双方の協力で避妊が可能な方法が選択されるような啓蒙活動がもっととられてもいいのではと考えます。

2、 については、現在低用量ピルが避妊のみの目的で処方され、自己負担となっていることから、子宮内膜症の患者には、治療用として健康保険が適用されないことを問題とされているようです。

子宮内膜症の治療として低用量の女性ホルモン剤がリスクを上回る有効性があり、それがたまたま低用量ピルと一致しているのか、又はもっと有効な治療法があるのかは現在まだはっきりとはしていないのではないでしょうか?

しかし、他に有効な方法が確立されてなく、低用量ピルが現在のところベターであるのなら、治療用に健康保険内で使用できるようにすることは必要と考えます。この場合もリスクは当然正確に伝えられることが必要です。

3、 については、日本で現在使用されている薬剤の中で、過去にどれほど統計的に有効とされる臨床治験や疫学調査が日本で行われ、それが国民に正確に情報として提供されたでしょうか?

世界に名だたる薬害大国なったのはどうしてでしょうか?

薬である以上有効性とともに副作用は必ずあり、それが服用する個々人に正確に伝えられ、その上で選択するのはその個人であるという、自己決定権の行使には正確な情報が欠かせません。

私たちはその一助となる情報をお伝えできればと思っております。

なお、ピルについては、「エコロジーと女性」グループの皆さんによる「ピル110番」として次のホームページをぜひご参照ください。私たちよりももっと詳しい情報を持っておられます。

新薬学研究者技術者集団からの回答

新薬学研究者技術者集団は、ホームページ上に「必ずしも当集団の見解を示すものではありません。」との注記を追加し、ホームページの構成を変更しました。
現在、近藤論文は、機関誌「新しい薬学をめざして」の記事の紹介から見ることが出来ます。

(2002.02.18「近藤論文」はこっそり削除されました。

このことについて、シグマに送ったメールは以下の通り。)

新薬学研究者技術者集団運営委員会 殿

去る1月14日に、近藤論文は個人論文であり、シグマの見解を示すものではない
とのメールを頂きました。
その後、2月18日になって近藤論文はシグマホームページから削除されました。
思うに近藤論文には問題点が多く含まれており、
この措置自体は妥当であると考えます。
しかし、掲載削除はシグマとしての見解表明に代わるものではありません。
貴会が近藤論文について何らの見解も表明していないことは歴然とした事実です。
また、貴会機関誌は冊子として刊行されているものです。
HP上からの削除は何らの意味も持ちません。
一連の貴会の対応を見て、不思議に思うことがあります。
近藤論文が少なからぬ国民に影響力を持ってきた事実を、
貴会は認識しているのでしょうか。
たとえば、リンク構造を反映する検索エンジンGoogleで「低用量ピル 癌」を検索
すると、
近藤論文は427件中の2番目に表示されます。
http://www.google.com/search?hl=ja&q=%92%E1%97p%97%CA%83s%83%8B+%8A%E0&btnG=Google+%8C%9F%8D%F5&lr=lang_ja
同じく「低用量ピル 次世代」を検索すると、
1番目に表示されます。
http://www.google.co.jp/search?q=%92%E1%97p%97%CA%83s%83%8B+%8E%9F%90%A2%91%E3&hl=ja&btnG=Google+%8C%9F%8D%F5&lr=lang_ja
なぜ近藤論文が上位に表示されるのでしょうか?
それは有力サイトからリンクされている「シグマHP」内のコンテンツだからです。
シグマHPは近藤論文を普及させるのに、
大いに貢献してきました。
近藤論文が2次3次利用されて流布していることについては、
別の機会に指摘させていただきます。
シグマは「近藤論文」の誤りを一句たりとも認めていません。
近藤氏もまた同様です。
誤りでないと思うものを削除するのは、理解に苦しむところです。
誤りがないないと思うなら、
堂々と主張すべきでしょう。
誤りがあったと思うなら、
自ら訂正すべき事です。
誤りを認めずにこっそり削除してしまうことは、
私には姑息この上ない行為のように思えます。
貴会は社会的存在であるという自覚をお持ちなのでしょうか?
今回の削除措置をみて、
私は近藤氏とシグマが「共犯関係」にあるとの思いを抱かずにはおれません。
近藤氏に「拡声器」を提供したのはシグマです。
近藤氏をかくまったのもシグマです。
証拠隠滅に協力したのもシグマです。
シグマが輝かしい伝統に恥じない堂々たる対応をなさる日が来ることを祈ってお
ります。

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【1】英国での低用量ピルに関連した死亡と集団訴訟

 英国では'94〜'97年までの4年間で、50名がピルに関連した死亡としてあげられている。保健省は、他のリスクファクターも考慮すべきであるとはいっているが、死亡者には若い世代が多く(10代6件、20代22件)、なおかつピルの服用開始もしくは、そのピルに変更してから3カ月以内という短期間で死に至っている例が多い。この死亡例を含めて英国では、犠牲者とその家族による集団訴訟が起きていると報道されている。
 死亡例の内訳は、肺塞栓症43人(複数肺塞栓症3人を含む)、後は各々1人ずつで、脳梗塞、クモ膜下出血、左心室不全、心筋梗塞、突然死、自殺、子宮頚癌となっている。
 50名が服用したピルは、成分または製品別により12種類に分かれるが、いずれもエストロゲンは全てエチニールエストラジオールであり、含有量は20〜50μgの範囲である。もう一つの成分であるプロゲストゲンは、種類と量により第2世代と第3世代ピルに分かれるが、低用量ピルである第3世代が5種類含まれていて、この5種類で計29人の死亡者をだしている。この中には日本で発売予定の2成分も含まれている。

@参照文献

 「エコロジーと女性」ネットワーク(以下「エコロジーと女性」とする)は、「ピルに関連した死亡例(1994.1 - 1997.12)の死因と服用していたピルの成分」という資料を公表しています。この資料は、「イギリス保健省の記録をもとにまとめたもの。成分についてはイギリスの医師向け医薬品手引書を参考。作成:「エコロジーと女性」ネットワーク/吉田」とされていますが、もちろんウソです。「エコロジーと女性」が調査したものではなく、アメリカのプロライフ団体「ALL(全米いのち連盟)」が公表した資料を翻訳したものです。
 近藤論文では「エコロジーと女性」翻訳が参照されています。

Aデータ期間

 原著をみると、1994年1月から1997年9月までの45ヶ月の死亡患者データとなっています。「エコロジーと女性」翻訳で、1997年12月までとなっているのは間違いです。

B研究デザイン

 イギリス保健省の記録をもとにピルと関連があると考える死亡例をピックアップしたことだけが明らかで、どのような基準でピックアップされたのかなど、詳細については原著においても明らかにされていません。

Cピル服用が疑われる事例が含まれている

 近藤氏は「ピルの服用開始もしくは、そのピルに変更してから3カ月以内という短期間で死に至っている例が多い」と書いており、処方日時と死亡日時のデータを知っていたわけです。このようなコメントは原著にありません。この近藤論文のコメントは事実を歪めています。原著の「処方」は最終処方年月日です。3ヶ月に一度病院で処方を受けていたとすれば、当然最終処方日から3ヶ月以内の死亡となるケースが多くなります。近藤論文では、ここでひとつの歪曲がなされています。
 もし、「処方」が最初の処方日時を意味するのなら、ADR No.357204の患者はピルを服用していなかった可能性が出てきます。この患者については、ピルの「処方」は96 年7月であり、死亡は同年同月5日となっています。ピルは生理初日に飲み始めるものであり、処方から死亡までの最大5日間に服用を始めていたか定かではなくなります。常識的に考えれば、ピルの処方は受けたけれども、服用は始めていなかったとも考えられます。しかし、このケースについては、前から服用していた可能性もあるし、初めてであった可能性もあります。
 このように考えると、むしろ最終処方から死亡までの期間が長いケースについて検討が必要です。50ケース中13ケースについては、最終処方日時が不明となっています。さらに、21ケースについては最終処方から6ヶ月以上が経過しています。ADR No.W802581の患者は95年9月4日に48歳で死亡しています。彼女が最終処方を受けたのは6年前の1989年でした。ピルをかつて服用したことのある患者を全て「ピルと関係ある死亡」にカウントすれば、当然のことながら死者は多くなります。
 ピルの服用中止から2週間以内までは、血栓症のリスクが高くなる、というのが医学上の常識です。中止後数年経った血栓症死亡例までピルと関連づけることは、水増し操作といわねばなりません。
 なお、上記45ヶ月を含む1999年5月までの10年の期間、イギリスでピル服用中に死亡した女性は104人と伝えられています(保健省当局発表)。たとえその死因の全てにピルが関係していたとしても、10年間で104人です。3年半の間に50人は多すぎるような気がします。
 

D疫学調査結果との整合性

 欧米のピルユーザーについての各種疫学調査では、血栓症発症率は1万人につき1.77人程度となっています。血栓症の死亡率は最大4.2%程度です。つまり、欧米のピルユーザー1万人につき、死亡者は最大0.074人程度となります。580万人以上のピルユーザーがいれば、43人の死亡者が出ても不思議ではありません。ところが、当時イギリスのピルユーザーは150万人です。疫学調査結果と異なる死亡リストが作られたのは、上記Cの水増し操作が行われたからではないでしょうか? 

E因果関係

 原著および「エコロジーと女性」翻訳は、ピルの服用と死亡との間に関係があるように印象づける記述にはなっています。しかし、この調査がピルへの恐怖感を煽る目的でなされたものであることを十分に自覚していたと見え、因果関係への言及は注意深く避けられています。ところが近藤論文では、「この5種類で計29人の死亡者をだしている。」と明確に因果関係があるように記述しています。歪曲された調査に歪曲の輪をかけたのが、近藤論文といえましょう。科学を口にする資格のない行為です。

F第3世代ピル

 「エコロジーと女性」は、第3世代ピルの認可阻止に異常な執着を見せました。「エコロジーと女性」翻訳では、原著にない世代別の色分けを行っています。近藤論文が「エコロジーと女性」翻訳の尻馬に乗って、第3世代ピルパッシングをしているのは上述の通りです。(近藤氏の「この中には日本で発売予定の2成分も含まれている」との記述は、1成分の間違い。)この資料で第3世代ピルの死亡が多いように見えるのは、ひとつには調査方法の問題です(参照)。しかし、それだけではありません。「エコロジーと女性」翻訳では、原著を意図的に操作し、第3世代ピルが死亡と結びつく印象を与えています。たとえば、6人がCilestを服用して死亡したことになっています。Cilestを第3世代ピルに分類することは誤りであるとは言い切れませんが、第3世代ピルで血栓症発症率が高いとした研究の多くでは第2世代ピルに分類されています。データを都合よく解釈するために、時に第2世代ピルに分類したり、時に第3世代ピルに分類したりする操作はいかがなものでしょうか?

G他のリスクファクター

 近藤論文では、「保健省は、他のリスクファクターも考慮すべきであるとはいっているが」との一文が付加されています。原著に見られないこの一文は悪質な脚色です。狂信的なカソリック原理主義者が行ったずさんな「調査」に、イギリス保健省がわざわざ公式コメントを寄せるわけがないでしょう。ずさんな調査を権威ある調査に見せかけるために、近藤氏が脚色したものではないでしょうか。
 「保健省のコメント」というのはでっち上げであっても、「他のリスクファクターも考慮すべきである」との指摘はまさにその通りです。近藤氏は「他のリスクファクターも考慮すべきである」ことを知っていながら、それを無視しているわけで悪質といわねばなりません。
 50名の死亡例の中には、子宮頚癌の患者も含まれていますし、自殺者まで含まれています。ADR No.322928の自殺者のケースでいえば、死亡の約10ヶ月前に Norplantの手術を受けています。このNorplantと自殺は関係していたのでしょうか?たしかに、ホルモン剤で鬱傾向の副作用が出ることがあります。しかし、個別のケースについて、ピルとの因果関係を論じることは困難です。そこで疫学的研究が積み重ねられてきたわけです。もしピル服用者で自殺率が高ければ、そのリスク分だけ個々の自殺の原因にピルが関係していたかもしれない、ということはできます。このような手続き抜きに、ピル服用者が自殺したらピルが関係していた、などいえないのです。自殺のケースに限らず、この調査自体が科学的な手続きとは無縁の方法でなされています。
 近藤氏はさすがに専門家だけあってこのことに気づいていました。にもかかわらず、この調査結果を正確なリスク情報である、と宣伝していたことになります。

H正確な情報と薬害の防止

 近藤氏は、「推進派の女性達にも正確なリスク情報を伝えていくことが重要である。」と述べています。また、掲示板では、「世界に名だたる薬害大国なったのはどうしてでしょうか?
薬である以上有効性とともに副作用は必ずあり、それが服用する個々人に正確に伝えられ、その上で選択するのはその個人であるという、自己決定権の行使には正確な情報が欠かせません。」と述べています。
 正確な情報が重要であることはいうまでもないことです。問題は近藤氏が自らの情報提供を「正確な情報」と強弁していることです。私には、それが「正確な情報」である、とはとても思えません。
 誤診をなくし薬害を防ぐために、正確な情報とともに非常に重要なことがあります。それは奇異な現象に遭遇した際に、「あれっ?ちょっと待てよ」と思うセンスです。このセンスがなければ、いくら情報を持っていても重大な事態を見落としてしまいます。医学薬学に限らず、科学的な訓練を多少なりとも受けた人であれば、ご存じのことと思います。このセンスのない方は、いくら研究しても二流三流です。
 近藤氏に欠けているものは、このセンスです。「実践のなかで現実を正しく分析する方法論の確立をめざします。」とは、シグマの「活動趣旨」です。この活動趣旨は実践の中で「あれっ?ちょっと待てよ」と思うセンスを磨くことだと理解しておりました。このようなセンスの欠如した方々がたくさんいることが、日本の医療の不幸だと考えます。

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"A Consumer's Guide to the Pill and other Drugs"(2nd ed.)1997について

@ちぐはぐな専門的知識

 近藤氏や近藤氏が親しくしている反ピル団体の言説を見ると、驚くほど専門的な情報が含まれていることがあります。その一方で、簡単に入手できる情報をご存じなかったりします。このようなちぐはぐさは、どうして起きるのでしょう。
 日本の反ピル団体の情報量は、98年末から99年始めの時期に急成長します。素朴な環境運動団体が、専門的な医学文献や日本では入手することがほとんど不可能なマイナーな報道記事を駆使して、ピルの危険性に警鐘を鳴らすようになります。近藤論文は、このような動きと軌を一にして公表されました。
 日本の反ピル団体の「急成長」は、どうして可能だったのでしょう?その答えは、おそらくALL(全米いのち連盟)との関係にあります。ALLは、反ピル宣伝に使えそうな材料を世界中からかき集めて発信しています。これに依拠したと考えれば、「急成長」の秘密は容易に理解できます。
 ALL関連文献の中の極めつけが、John Wilks "A Consumer's Guide to the Pill and other Drugs"(2nd ed.)1997です。近藤論文が直接あるいは間接的にこの本の情報をもとにしていることは、以下の検討によって明らかになるでしょう。
 ところが、おもしろいことに近藤氏も反ピル団体も、この本を参照文献としてあげることはあっても(近藤氏は参照文献としてさえあげていない)、引用文献としては明示しません。そして、その本の中に上がっている参考文献を自らの引用文献としてあげています。学問的訓練を受けていない大学生がやりそうな手口です。反中絶・反避妊・反ピル団体であるALLとの関係を、よほど秘密にしておきたい事情があるのでしょう。
 Wilks,J.(1997)は、幅広く反ピル材料を収集していますが、それだけにちぐはぐさも内包している文献です。それをさらに受け売りしている日本の反ピル運動が、ちぐはぐさに輪をかけているのは、当然といえば当然のことでしょう。
 
A著者とこの本の特徴

 "A Consumer's Guide to the Pill and other Drugs"(2nd ed.)1997の著者、John Wilksはオーストラリアの薬剤師です。Wilks氏はご自分で文献に当たっており、近藤氏とは較べられないほどの努力をなさっています。おそらく、リストアップされた文献の何十倍もの文献に当たっているはずです。この努力は大いに認められていいと思います。したがって、さもご自分で調べたように結論と引用文献をあげるのは、Wilks氏に対して失礼なことです。
 Wilks氏は広範な文献に当たっていると思われるのですが、何故か反ピルの材料になりそうな論文だけが、そして反ピルの材料になりそうな部分だけが、資料として引用されます。これは私だけの感想ではありません。シドニー生殖保健研究センター調査部長E.ワイスバーグ氏も以下のように評しています。
「医学上の証拠が強調される現今の風潮の中で、この書を批評することは非常に難しい。なぜなら、資料の多くは情緒的であり、文献の多くは女性や科学者へのインタビュー記事である。
 避妊法についてのデータの多くは、正確に引用されている。しかし、メリットとリスクについて公平な説明がなされることなく、否定的な発見を強調している。」
 つまり、結論が先にあり、結論を補強する材料だけをかき集めたと言うことが出きるでしょう。

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【2】副作用における厚生省報告の問題点(1)血栓症

 上記の集団訴訟の死亡原因となった血栓症については、厚生省の「中間とりまとめ」でも、ピルの服用により、先天的に凝固系第V因子Leiden突然変異を持っ女性では、血栓症のリスクが相乗的に高まると記載されている。しかし、「意見書ならびに要望書」では、このようなリスクは、後天的にも獲得されることを、文献をあげて示している。

 それによると、このような先天性の異常がない女性でも、ピルを服用することにより、突然変異を持つ人と同じように、血液凝固を抑制する蛋白である活性化プロティンC注1)に対して抵抗性を持つようになり、血液凝固を阻害するようになる。(Brit. J. Haematology,97:233−238,1997)

 日本では、血栓症に対しては、北村邦夫医師(日本家族計画協会クリニック所長)のように、家族歴があったり、既往歴があるなどのリスクの高い女性に、処方を控えることにより、十分予防的対応が可能であるとの意見が、ピル推進派では大半を占めている。その根拠としては、日本人には、先天性の凝固系第V因子の突然変異が、欧米に比べて極端に少ないため、女性の血栓症発生率も稀であることが考えられる。しかし、このように後天的に獲得されるリスクについては、今のところ言及していない。

@参照文献 

 Wilks(1997)は、第4章第1節「ピルと血液凝固」で、British Journal of Haematology Vol.97, 1997 に発表されたRosingらの論文を取り上げています(J. ROSING, G. TANS, G. A. F. NICHOLAES, M. C. L. G. D. THOMASSEN, R. VAN OERLE, P. M. E. N. VAN DER PLOEG, P. HEIJNEN, K. HAMULYAK AND H. C. HEMKER ,Oral contraceptives and venous thrombosis: different sensitivities to activated protein C in women using second- and third-generation oral contraceptives. British Journal of Haematology: 1997, 97, p 233-238)。 
 WilksはRosingの論文を引用しながら、ピル服用者でプロテインC抵抗性が現れること、そしてそれが血栓症のリスクを暗示するものであることを、例によって熱い筆致で論述しています。確かに一文一文を読んでみると、明らかな誤りはありません。ある程度の知識がなければ、Wilksを読んでその奇妙な論理に気づくことはないでしょう。Wilksを読んだ反ピル派の方が、近藤論文のような理解をしたとしても不思議ではありません。 

AX因子ライデン

 議論のすり替えはどこでなされているのでしょう?その鍵は、プロテインC抵抗性とX因子ライデンの変異をイコールで結んでいることです。 
 欧米では、人口100万人につき約3万人にプロテインC抵抗性が認められます。日本でもその比率はほぼ同じです。プロテインC抵抗性を持つこと自体はそれほど珍しいことではありません。 
 プロテインC抵抗性があると必ず静脈血栓症を発症するのでしょうか?そうではありません。欧米において、静脈血栓症患者の中でプロテインC抵抗性が認められるのは約半数です。つまり、人口100万人につき約25人については、プロテインC抵抗性を持つ血栓症患者がいます。逆に言うと、プロテインC抵抗性が認められる3万人のうち、2万9975人には血栓症は発症しません。プロテインC抵抗性のある3万人のうち、血栓症の発症は25人対2万9975人の比率である。これがまず、基本的な事実です。 
 プロテインC抵抗性があると3万人中25人に血栓症が発症しますから、プロテインC抵抗性のない人よりも血栓症発症率は非常に高いといえます。しかし、ある重要な事実があります。それは、プロテインC抵抗性を示す血栓症患者(100万人中約25人)の90%近くにX因子ライデンの変異が認められるということです。プロテインC抵抗性だけでは血栓症に直結しないのであり、X因子ライデンの変異が血栓症の発症に大きく関係しています。 
 X因子ライデンの変異は遺伝によるものであり、日本人についてはX因子ライデンの変異は発見されていません。これが日本人に静脈血栓症の少なく、白人にあっては民族病といわれる大きな原因です。 

B「副作用における厚生省報告の問題点」といえるか? 

 近藤氏は「副作用における厚生省報告の問題点」として、Rosingの論文の存在を指摘しています。たしかに、厚生省報告ではこの論文について触れていません。この報告について触れていない厚生省報告は重大な問題点を持っているのでしょうか? 
 Rosing論文は、血栓症のリスクとX因子ライデンとの関係についての従来の知見を変更する論文ではありません。したがって、「厚生省報告」に重大な問題点があると私には思えません。Rosing論文が明らかにしようとしたのは、ピルユーザーで血栓症リスクが上昇するメカニズムです。しかも、それは一つの仮説を提示したに過ぎません。だから、「OCを使用していない女性と較べ、OCを使用している女性は使われているOCの種類に関係なくAPC(活性化プロテインC)感受性の明らかな減少を示した。第3世代1相性OCを使用している女性は、第2世代OCを使用している女性よりも、明らかにAPC感受性は低かった。・・・獲得されたAPC抗体は、OCユーザーとりわけ第3世代OCを使用している女性における、静脈血栓症リスク増加という疫学的な知見を説明するかもしれない。」と書かれているのです。Rosingの指摘は、ピル服用者で血栓症リスクが高くなるという既知の知見のメカニズムを説明しようとしたものであり、それによって「厚生省報告」が否定されるようなものではないのです。 
 ところが近藤論文を読むと、X因子ライデンに関係なくピルの服用で血栓症リスクが増大するかのような印象を受けます。もし、そうであるならば、近藤論文の指摘は重大であり、「厚生省報告」が問題であるということもいえるでしょう。しかし、それはRosing論文の拡大解釈です。近藤氏らピル反対派にとって、X因子ライデンが血栓症と大きく関係していて、しかもX因子ライデン変異は日本人に見られないという事実は不都合でした。近藤論文で、X因子ライデンと血栓症の関係についての従来の知見が、Rosing論文によって否定されたように書いているのはそのためです。 
  
C予防的対応

 近藤氏は鬼の首を取ったかのように、北村氏がこの問題に言及していないことを責めています。しかし、近藤氏が取ったものは、鬼の首ではなくイワシの頭ではなかったでしょうか?血栓症についての一定の基礎知識があれば、北村氏の指摘が妥当なものであることは明らかでしょう。ピル服用者の血栓症発症率を下げる有効な方法は、既往歴・家族歴の問診です。そのため、WHOの基準でも世界各国でも、ピルの処方に際して問診が重視されています。 
 近藤氏が北村氏に対して行っている批判は何でしょうか?近藤氏は予防的対応などあり得ないと言いたいのでしょうか?つまり、ピルを服用すると必ずプロテインC抵抗性が現れる。したがって、ピル服用者は全て血栓症素因者と考えることができ、全員にピル服用を中止してもらうしか予防的対応はない。このようにお考えなのでしょうか?もしそうであれば、上述のようにそれは誤解です。 
 それとも、問診では予防的対応にならないと言いたいのでしょうか?日本では問診が軽視され検査が重視される傾向があります。ガイドラインには現実的には行えない検査項目が列挙されています。これはピル反対運動の成果であったかもしれません。しかし、厳重な検査を課せばそれだけ血栓症の発症率を抑えることができるかといえば、そのようなものではありません。プロテインC抵抗性についての「科学的言説」が結果として、効果的な予防的対応を妨げることになれば、かえって血栓症の発症は増加するかもしれません。(問診が軽視されていることの責任が、ピル反対派の運動にあると言っているのではありません。) 

 近藤氏を始めとするピル反対派は、「正確なリスク情報」と言いながら、不確かな科学知識を振り回してきました。そしてそれは、現実の行政を動かす力になってきました。近藤論文も現実の歴史を動かす役割を果たしてきた「歴史的文書」です。名もなき一市民に答える必要はなくても、歴史に対して弁明する責任はあるように思います。 

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【2】副作用における厚生省報告の問題点(2)乳癌発症の年齢別リスク

 厚生省の「中間とりまとめ」では、ピル服用開始年齢と乳癌発症の関連性についての報告は、自ら出典文献中にあるにもかかわらず触れていない。そこでは、相対リスクとして、現服用者1.24、服用中止後1〜4年1.16、同5〜9年1.07、同10年以降1.01、という数値が挙げられている(全年齢を含む)。

「意見書および要望書」では、若年の乳がん発症のリスクが、服用開始年齢の若さと関連があるとして、厚生省と同一の文献から、ピル服用開始年齢が20歳末満では、リスクが最も高くなることを示している。現服用者での相対リスクが1.59(20歳末満)。また別の文献から、25〜34歳の女性では、少なくとも1年以上のピル使用者は、非使用者と比べて、乳癌発生の相対リスクは1.7である。

 また閉経期前に、乳癌と診断される平均年齢として、非服用者46.3歳、20歳前にピルを服用開始した者は36.5歳となっている。約10年若く乳癌となり、症状も脇窩への転移の頻度が高く、生存率が低いとしている。更に36歳前に乳癌と診断された女性のうち、4年以上のピルの使用と、とりわけ部分的に20歳前に服用の場合には、4年末満の使用者に比べて2倍のリスクがある(しかも低用量ピルの方が、高用量ピルより乳癌のリスクが高い)。

 ピルが認可された場合、欧米のように、若い女性の使用が多いことが予想されるので、このような年齢別リスクについての情報は、もっと個人が判断可能な形式で詳しく出すべきと思われる。

@参照文献
 
 Wilks(1997)は、第3章「ピルと乳ガン」の多くを年齢による乳ガンリスクの問題に費やしています。この問題で彼が取り上げている論文は、86報にもなります。Wilks氏が若年者のピル服用問題にこだわるのは、単に副作用の問題だけではないようです。Wilks氏は若い女性の性的活動を抑制する運動が倫理的である、との意見を表明しています。Wilks氏にとって、若い女性への「ピルの処方は倫理的に許されない」ことなのです。日本の反ピル団体も未成年者へのピル処方に反対していたことが思い出されます。
 近藤氏が参考にした、「意見書および要望書」ではWilks氏が取り上げた86報を含む6報を取り上げています。

A疫学研究の難しさ−−マク○ナルドのハンバーガーと乳ガンリスク

 ピルと乳ガンリスクについての研究は山ほどあります。それらの中には、ピルに乳ガンの予防効果があるというものもあれば、ピルで乳ガンが多発するというものもあります。なぜ正反対の結論が出てしまうのでしょう。小規模な研究ではサンプルに偏りがあることがあります。では、大規模に調査すれば正確なリスクが計算できるかと言えば、そうでもありません。
 近藤さんには、マク○ナルドのハンバーガーと乳ガンリスクの研究をしてほしいと思います。きっと、マク○ナルド不買運動を始めなくてはならなくなるでしょう。でも実際は、マク○ナルドのハンバーガーで乳ガンが多発することはないでしょう。
 現在日本では、年間約3万人の乳ガン患者が発生していますが、これは1970年の約3倍です。この30年の間に、マク○ナルドのお店は急増しましたし、そのお客は主として若い層でした。また、その店は田舎ではなく都市に集中しています。都市の若い人々はマク○ナルドのお得意さんです。彼らは乳ガンになりやすい他の条件も持っています。早い初経年齢、遅い初産年齢、出産歴がない、遅い閉経年齢、授乳歴がない、閉経後の肥満、成人での高身長、運動の習慣がない、乳癌の家族歴あり、アルコール・脂肪の摂取、放射線被曝あり、BRCA-1,BRCA-2,ATMの遺伝子の異常。これらは乳ガン増加の要因と考えられています。マク○ナルドのお得意さんとこれらのリスクファクターが重なっていれば、マク○ナルドを食べると乳ガンにかかりやすく見えます。
 マク○ナルドのハンバーガーがほんとうに乳ガンリスクを増大させるかどうかは、他の要因の影響を排除して算出する必要があります。
 ピルと乳ガンリスクの関係についても、同様なことがいえます。Wilks氏は多くの研究を列挙していますが、疫学研究がわかっていないのではと疑われます。同氏の著書の中で、アメリカ・オーストラリア・日本の乳ガン発生率を比較し、日本でピルが認可されていないことが日本の乳ガン発生率が低い原因だと述べています。こういうことを堂々といえる方は、疫学がわかっていない方だと考えて間違いないでしょう(参照)。

B不都合な研究は無視

 Wilks氏は若いピルユーザーに乳ガンリスクが高いことを「証明」し終わって、「科学的証拠」によって論敵シドニー生殖保健研究センター調査部長ワイスバーグ氏に引導を渡せたと宣言しています。ここは、当のワイスバーグ氏の意見も聞いてみることにしましょう。

乳癌と経口避妊薬使用の関係について、Wilksは、「若年女性のピル使用は乳癌のより大きなリスクをもたらす、つまり腫瘍をより大きくし、より悪い予後をもつことになる」と結論づける。規模の小さく重要度の低い研究を正確に引用しているが、これは現在最も決定的なものと見なされている1996年のランセットに公表された研究とは全く相容れない。この1996年の研究は54報のデータを再分析し、乳癌のない10万239人以上の女性と5万3297人のピルユーザーの乳癌患者の乳癌発生率を比較したものである。その結論は、@ピル服用中及び停止から10年以内においてわずかな乳癌リスクの上昇が見られる(相対リスクは現使用者で1.24、中止後5〜9年で1.07)。Aこのリスクは服用中止後10年以上で解消する。Bピルユーザーの乳癌は、非服用者よりも予後は明らかに良好である。研究グループはまた以下のように結論づけた。C20歳から24歳のピルユーザー1万人につき、服用中および中止後10年の間に乳癌となる確率は1.5人となるだろう。

 上引でワイスバーグ氏は非常に重要な指摘をしています。Wilks氏は山ほどの論文を引用しているのに、もっとも重要な研究を無視しているという指摘です。その研究は、“Breast cancer and hormonal contraceptives: collaborative reanalysis of individual data on 53297 women with breast cancer and 100239 women without breast cancer from 54 epidemiological studies", Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer, Lancet, 1996;347:1713-27(以下、Collaborative Group(1996)とする)です。この研究は、ピルと乳癌リスクに関するそれまでの研究を集大成するものでした。サンプルの数といい、分析手法といい、まさに論争に終止符を打つためになされた研究といえるものです。実際に、この研究が出て以後、ピルと乳癌リスクについての論争は終息に向かいました。Wilks氏はこの研究を知っていたであろうにもかかわらず、これを無視しています。

CWilks流の見事な継承

 1998年12月2日、中央薬事審議会常任部会は「ピルの有効性及び安全性」についての資料をとりまとめ、公表しました。「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」です。この資料はワーキングが作成したもので、これ以外に「中間とりまとめ」なる資料を私は見たことがありませんし、そのような資料が存在することはないと思います。
 「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」=「中間とりまとめ」は、当然のことながら上記Collaborative Group(1996)を参照しています。Collaborative Group(1996)を参照している「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」=「中間とりまとめ」は、「問題点」を含むものなのでしょうか?
 まず、エコロジーと女性ネットワーク「意見書および要望書」が、Collaborative Group(1996)についてどのようにコメントしているか見てみましょう。

 (27)は過去の疫学データの再集計での分析ですが、非使用者と較べた相対リスクは、現在の使用者で20歳前に服用を開始したものは1.59、服用中止後1〜4年では1.49となっています。さらに、30歳前に乳癌と診断されたもののうち最もリスクが高いのは20歳未満で服用開始し服用中止後5年未満の女性で1.95、30〜34歳で診断されたうちの最高リスクも同様で20歳未満で服用開始し服用中止後5年未満が1.54となっています。

 これを読むとCollaborative Group(1996)は、20歳未満の服用開始ではリスクが大きくなると結論を出しているように見えます。しかし、それは原著Collaborative Group(1996)の趣旨を全く反映していません。まさか英語が読めないわけではないと思いますが、原著論文を訳してみましょう。

最近の使用を考慮に入れても、使用期間・服用開始年齢・中用量低用量の別・経口避妊薬のホルモンの種類のような他のピル使用上の特徴は、乳癌リスクにほとんど影響を及ぼしていない。20歳前に服用を開始した女性は、もっと年を取って服用を始めた女性と較べて、現に服用していようと中止後5年以内であろうと、乳癌と診断されるより高い相対リスクを持つが、その高い相対リスクは乳癌が稀な年代層への適用であり、彼らの服用期間が長くなっていることを考慮すれば、若年者の服用が高年齢での服用開始よりも多くの診断された癌を生じさせているということにはなっていない。

 エコロジーと女性ネットワークの「意見書および要望書」は、都合のいいところを都合のいいように利用するWilks流をそのまま引き継いでいます。原著論文の結論を全く正反対にしてしまう神経には、恐れ入るというより他ありません。
 近藤氏はどうでしょうか?近藤氏は「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」について、「ピル服用開始年齢と乳癌発症の関連性についての報告は、自ら出典文献中にあるにもかかわらず触れていない」と述べています。しかし、それは近藤氏の大ウソです。「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」=「中間とりまとめ」は、非服用者と服用者の比較・服用期間別リスクに続けて、開始時年齢別リスクを挙げています。それを以下に引用してみましょう。

開始時年齢別リスク
(非服用者と服用者の比較)

      症例  対照  相対リスク± SD
非服用者  28,200 55,220  1.00±0.014 
20歳未満  2,719 4,205  1.22±0.044 
20〜24歳  5,334 9,111  1.04±0.025 
25〜29歳  3,888 7,205  1.06±0.025 
30〜34歳  2,932 5,412  1.06±0.030 
35歳以上  3,059 5,590  1.11±0.032 

  傾向検定       有意差なし  

OC服用開始年齢別の乳癌発現リスクは、20歳未満で1.22倍、20〜24歳で1.04倍、25〜29歳で1.06倍、30〜34歳で1.06倍、35歳以上1.11倍であったが、傾向検定で有意差は認められなかった1)。
1)Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer:Lancet 347,1713-1727, 1996

 近藤氏はこの記述が見えなかったのでしょうか?傾向検定で有意差のないデータなので、意図的に無視したのでしょうか?近藤氏は、不都合なデータは無視するWilks流をそのまま引き継いでいます。

D高用量ピルより乳癌のリスクが高い?

 エコロジーと女性ネットワークの「意見書および要望書」は、“Oral contraceptives and risk of breast cancer in women aged 20-54 years", Rookus MA et al. Lancet,1994;344:844-851を参考文献にして、「また予期せぬ発見として、低用量ピル使用者の方が高用量ピル使用者より乳癌のリスクが高かったことがあげられていますが、これは今後の他の研究での確認が待たれています。」とコメントしています。これはWilks(1997)には見られないエコロジーと女性ネットワーク独自のコメントです。Rookusが当該論文の主題から離れて軽く言及した一節を、エコロジーと女性ネットワークは見落とさなかったのです。エコロジーと女性ネットワークは低用量ピルの意義を認めようとしません。低用量ピルを目の敵にするあまり、中用量ピルを持ち上げているかのような印象を与える書き方さえしています。そのような思考がRookusの一文に注目させたのでしょう。
 「意見書および要望書」はやや控えめな表現を取っていますが、近藤氏になると低用量ピルは「高用量ピルより乳癌のリスクが高い」という断定的な表現に変わります。
 乳癌だけを取ってみれば、低用量ピルと中用量ピル(海外では中用量ピルという概念はなく、低用量でないものは全て高用量ピル)で、リスクに差はありません。しかし、このような形で中用量ピルを持ち上げることは、あるべき情報提供なのでしょうか?
 反ピル運動の成果で、低用量ピルの選択にはさまざまな「制約」がつけられました。中用量ピルなら行われない検査が低用量ピルでは行われ、しかも保険が適用されないので負担は大きくなる。これはまさに中用量ピルの選択を誘導しているようなものです。このような奇妙な現実を合理化する役割を果たすものが、「高用量ピルより乳癌のリスクが高い」という言説です。「高用量ピルより乳癌のリスクが高い」という世界の常識に反する言説は、低用量ピルの認可を阻止するという目的ために主張されたものでしょう。目的のためには手段を選ばないという無責任な言説が、日本の女性の健康利益に反するものであることを自覚してほしいと考えます。
 
E責任ある言説

 服用開始年齢や用量による乳癌リスクに統計的有意差は認められない。これがこれまでの研究によって明らかにされている知見です。近藤氏は科学的常識と正反対の情報を「正確なリスク情報」として広めてきました。無職・無肩書き・無学歴・無資格・無名の一市民であれば、無責任な情報を流していると近藤さんはお考えのようです。しかし、私は自分で納得できない情報は納得できるまで調べて、情報提供しています。肩書き署名入りでも無責任な言説を堂々と公表する方もいれば、無名の一市民としての情報発信でも責任感を持って情報発信している者もいるのです。このことをご理解いただければ幸いです。

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【2】副作用における厚生省報告の問題点(3)子宮頚癌のリスク

 「中間とりまとめ」では単に、非服用者と服用者の比較で、オッズ比2.1となっている。「意見書およぴ要望書」では、子宮頚癌の発症が、服用開始年齢が若く、服用期間が長いほどリスクが高いことを示している。

 ピル服用12年以上のものでオッズ比4.4、服用1〜6カ月でオッズ比2.9、その他の文献では、服用開始年齢が20歳末満の場合、服用期間による相対リスクは12カ月未満2.8、60カ月以上6.2となり、服用開始年齢が35歳以上になると、服用期間による相対リスクの差は1.9〜2.0と殆どない。この他、ピル使用と、ヒトパピローマウイルス感染との関連についての文献も紹介している。

@参照文献

 Wilks(1997)は第2章「ピルと子宮ガン」でこの問題を取り上げています。その主張は、ピルによって子宮頚癌リスクが高まること、ピルは子宮頚癌の進行を早めることの2点に要約できます。エコロジーと女性の「意見書ならびに要望書」も、Wilks(1997)と同じ文献で同じ主張をしています。近藤論文の論点も同じです。

A子宮頚癌リスクの疫学調査

 子宮頚癌とピルの関係については、疫学研究の結果にかなりのばらつきがあります。なぜばらつきが生じるのでしょう。
 子宮頚癌のほとんどにHPVウイルスが関係しています。性交渉以外でもHPV感染はおこりえますが、多くは性交渉によって感染します。ウイルスが関係している病気なのに、どうしてピルユーザーではリスクが高いのでしょう。試みに、100万人の女性について架空の計算をしてみましょう。性経験のある女性が80万人。そのうち32万人(40%)がピルユーザで、48万人がノンピルユーザだとします。性経験のない20万人では、1万人(5%)がピルユーザで、19万人がノンピルユーザだとします。性経験のある女性の10%がHPVウイルスに感染するとすると、感染者は8万人になります。性経験のない女性では感染者がいないことにします。感染者の1%が子宮頚癌になるとすると、患者数は800人になります。ピルユーザー33万人中の子宮頚癌患者数が320人、ノンピルユーザー67万人中の子宮頚癌患者数が480人であったとすれば、ピルは子宮頚癌の発症に関係ないということになります(性体験ありなしの各グループ別に見ると、ピルユーザーとノンピルユーザーで患者比率は同じ)。しかし、ピルユーザーだけ取ってみると、100万人中970人の割合で子宮頚癌患者が出るのに対し(33万人中320人)、ノンピルユーザーでは100万人中716人の割合になります(67万人中480人)。ピルユーザーでは1.35倍子宮頚癌にかかりやすく見えますが、これはピルの服用が原因ではなく性交渉ありのグループにピルユーザーが多いことの結果です。
 上記は架空の計算ですが、正確なリスクを算出するにはバイアスを除去しなくてはならないことが理解できると思います。しかし、バイアスの除去は実際にはかなり難しいのです。ピルユーザーはノンピルユーザーと較べて、子宮ガン検診の受診率が高いかもしれません。あるいは、性行動がより活発であるかもしれませんし、コンドームなしのSEXの経験者(経産婦は全て含まれる)が多いかもしれません。さらに、HPV感染率は国によって相当大きな違いがあると考えられています。社会階層や年齢層によっても感染率は違います。ピルによる子宮頚癌リスクの疫学研究は、乳癌のそれより明らかに大きな困難があり、そのことが各研究結果のばらつきの一因になっています。
 
B「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」の評価

 まず、近藤さんたちが問題があるという「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」を見てみましょう。「とりまとめ」では、疫学調査上の妥当性が担保されている4報告を選択し、リスクは1.3〜2.1倍と推定しています。4報のうち断然規模も大きくしばしば引用されるWHOの調査では、相対リスクは1.34となっています。他の3報の相対リスクは1.34、1.5、2.1(規模の大きい順)です。後ろ向き調査では、1.3に近い数字になるというのはほぼ常識化していることであり、「とりまとめ」はむしろ慎重な推定を行っているといえます。なお、疫学調査上の妥当性が担保されていないとして評価から除外された3報の相対リスクは、0.4から1.4でした。
 近藤論文では、「とりまとめ」が、「非服用者と服用者の比較で、オッズ比2.1」との評価を行ったことになっていますが、不正確に歪曲されています。

C服用開始年齢と子宮頚癌リスク

 「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」=「中間とりまとめ」では、この問題について両論併記の形が取られています。すなわち、20歳未満と35歳以上でリスクの増加が認められたとしているThomasらの報告と、服用開始年齢の違いによるリスクの有意な増加は認められないとしているUrsinらの報告が併記されています。
 「経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ」=「中間とりまとめ」が、両論併記としたことを近藤論文は問題としているようです。近藤論文の「その他の文献では、服用開始年齢が20歳末満の場合、服用期間による相対リスクは12カ月未満2.8、60カ月以上6.2となり、服用開始年齢が35歳以上になると、服用期間による相対リスクの差は1.9〜2.0と殆どない。」との記述は、まさにThomasの報告をもとにしています。Thomasの報告だけを取り上げる形を取らなかった「とりまとめ」は問題だ、とする近藤論文の方が問題ではないでしょうか?
 ところで、Thomas DBの報告、 Ray RM.  Oral contraceptives and invasive adenocarcinomas and adeno- squamous carcinomas of the uterine cervix. The World Health Organization Collaborative Study of Neoplasia and Steroid Contraceptives.  Am J Epidemiol. 1996 Aug 1;144(3):281-9.で、服用開始年齢によるリスクの増加は証明されているのでしょうか?この報告で20歳以下の症例は16ケースに過ぎません。傾向検定で有意差はありません。  

D半年の服用で2倍になる?

 子宮頚癌には長い「潜伏期」があるため、ピルと子宮頚癌の関係は長い間解明されなかったのだ、とWilks(1997)は力説しています。たしかに、HPV感染→異形成→ガン化には、かなりの時間を要します。そうであるならば、服用期間が短ければリスクに大きな差がでないと考えるのが自然です。ところが、反ピル材料になりそうなデータには目がないWilks(1997)は、Ursin,Gらの研究に飛びつきます。それが近藤論文にもある「服用1〜6カ月でオッズ比2.9」というデータです。Wilks(1997)の書いていることは、自己矛盾しており支離滅裂です。
 Wilks(1997)の論理は支離滅裂ですが、「服用1〜6カ月でオッズ比2.9」というデータは信じていいのでしょうか。Ursin G, Peters RK, Henderson BE, d'Ablaing G, Monroe KR, Pike MC. Oral contraceptive use and adenocarcinoma of the cervix. Lancet 1994;344:1390-1394. は、195 ケースの腺癌患者について分析を行っています。総ケース数が少ない上に、20歳以下の腺癌は非常に珍しいものです。対照群(386ケース)をいかにケースコントロールしても、20歳以下のオッズ比が高くなるのは予想されることです。近藤氏はケースコントロール研究のことを理解した上で、このようなことをまじめに考えているのでしょうか?

EピルのHPVウィルスに与える影響−−伝言ゲーム?

 ピル服用と子宮ガンリスクの問題は、十分な決着がついていません。上述したように、子宮頚癌についてはリスクファクターが錯綜しており、疫学的研究には大きな困難があります。疫学調査の諸結果は、ピルユーザーで子宮頚癌が減少するとするものから、増加するというものまで、大きなばらつきがあります。ばらつきはありますが、ピルは子宮頚癌リスクを多少高めるのではないかという見方が有力です。
 そこで問題になるのが、もしピルが子宮頚癌リスクを高めるのなら、それはなぜなのかという問題です。子宮頚癌は主としてHPVウィルスが関係して、引き起こされることがわかっています。性経験のない女性がいくらピルを飲んでも、子宮頚癌になる可能性はほとんどありません。あるいは、HPVウィルス感染者のいない国があるとすると、その国ではピルを服用しても子宮頚癌リスクは上昇しません。現実のケースコントロール研究では、この点のコントロールはかなり難しいのです。
 この点をコントロールしたにもかかわらず、ピルユーザーで子宮頚癌リスクが高いとすれば、何らかのメカニズムが作用しているのではないかということになります。ガン研究は日進月歩の世界ですから、この問題に取り組んだ研究が現れてきました。しかし、ピルユーザーで子宮頚癌リスクが上昇するメカニズムについて「とりまとめ」が触れていないとしても、それは「問題点」といえるものではありません。ピル反対派は、「とりまとめ」が子宮頚癌発症のメカニズムに触れていないことをなぜ「問題」と考えるのでしょう?思うに、Wilks(1997)が取り上げた問題に「とりまとめ」が触れていない、だから問題だと考えているのではないでしょうか。
 Wilks(1997)は、例によって彼なりのやり方ですが、子宮頚癌発症のメカニズムに関する研究(今では少し古いですが)を取り上げています。それをエコロジーと女性が引き継ぎ、さらに近藤論文が引き継いでいます。伝言ゲームでは、本来のメッセージがだんだん変形して伝えられます。近藤論文の書き振りをみると、ガン研究で何が問題になっているのか、ほとんどわかっていないように感じます。ちんぷんかんぷんになった「伝言メッセージ」を「正確なリスク情報」として公表する。その姿勢が問われなくてはならないように思います。「ピル使用と、ヒトパピローマウイルス感染との関連についての文献も紹介している。」では、近藤氏本人も含めて、誰ひとりとして何が問題なのか理解できないでしょう。

F「心に愛がなければ、どんなに美しい言葉も相手の胸に響かない。」

 パウロの言葉として人口に膾炙しているこの一句、聖書の語句そのままの形ではないにしても、十分にパウロの真実を伝えています。それが多くの人々に受け入れられているのは、まさに愛がある言葉だからでしょう。ところが今、パウロの心を引き継ぐべき方々が、恐怖と脅しの言葉を発しています。
 近藤氏とは職種こそ違え、同じ医療関係者の方が作っているサイトにお庭のこっこがあります。子宮頚癌に関する情報を提供しているすばらしいサイトです。かなり専門的な情報を含んでいますが、子宮頚癌に対する啓発に大いに貢献しています。それは情報量が多いからでもあるし、情報が正確だからでもあるでしょうが、なによりも作者の心が読む者に伝わるからだと思います。
 反ピル派の方々の言葉に愛を感じることが出来たらなら、多少の間違いや不正確さには目をつぶることも出来ます。しかし、悪意の歪曲で塗り固められた言説を見ると、ピルに反対することが自己目的化しているとしか思えません。専門家の情報も、煎じ詰めれば多くは受け売りです。受け売りなら、誰が語っても同じもののようで、実はずいぶん違うものになります。「心に愛がなければ」という言葉、肝に銘じておきたいものです。

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【2】副作用における厚生省報告の問題点(4)ピルの免疫機能に及ぽす影響

 ピルと性感染症やエイズとの関係は、単に性道徳の乱れを招く恐れがあるという意味ではなく、ピルが免疫能を低下させるために、感染の拡大を招く可能性があるという視点からの検討を提言している。

@参照文献

 近藤論文は、「意見書ならびに要望書」のほぼ丸写しです。「意見書ならびに要望書」には、「6.その他、ピルの免疫作用に及ぼす影響」という項目があります。なぜ「その他」なのでしょう?実はWilks(1997)はこの問題を取り上げていないのです。「意見書ならびに要望書」が典拠としている論文は、Mostad, S.B. et al. Hormonal Contraception, vitamin A deficiency, and other risk factors for shedding of HIV-1 infected cells from the cervix and vagina. The Lancet 350(9082): 922-927 (September 27, 1997)です。この論文はWilks(1997)より後に書かれていますから、さすがにWilksも取り上げることができなかったのでしょう。
 Mostadの論文名を直訳すると、「子宮頚部・膣からのHIV-1感染細胞剥脱に対するホルモン避妊剤、ビタミンA欠乏症及びその他のリスク要因」となります。「意見書ならびに要望書」の訳は名訳?なので紹介しますと、「HIV感染細胞を子宮頚部と膣から剥げ落ちさせるリスクファクターとしてのピルその他の研究」となっています。ピルを悪者に仕立て上げたい気持ちがひしひしと伝わってきます。

Aピルを飲んでいるとエイズにかかりやすくなる?

 上記青字の近藤論文をもう一度読んでみて下さい。ピルユーザーは「性感染症やエイズ」にかかりやすくなる、という意味だと理解しませんでしたか?もしそうだとすると、それは全くの誤解のようです。Mostadの論文のどこを探しても、ピルユーザーが「性感染症やエイズ」にかかりやすくなるなど書かれていません。Mostadの論文は、HIV感染女性がピルの使用・ビタミン欠乏症・性感染症・免疫不全などの条件を持つと、HIV-1に感染した細胞の剥脱が大きいこと、そしてそのことが母子感染を含めてHIV-1に感染させるリスクを高めるかもしれないこと、を述べたものです。わかりやすく言うと、女性がかかりやすくなるのではなく、男性や子どもにうつしやすくなる、というわけです。
 実はMostad論文を読むまで、私は誤解していました。ピルユーザーでは、「ピルが免疫能を低下させるために」、「性感染症やエイズ」にかかりやすくなる事を述べた論文であろうと誤解していたのです。しかし、実際のMostad論文は全くそのような趣旨ではありませんでした。この誤解は私の日本語能力が劣っているためなのでしょうか。私のような日本語能力が低い者を「ミスリード」しない書き方をしてほしいものです。

BHIV患者への差別を助長しないか?

 Mostad論文は318ケースの検討結果であり、学術論文としてありうべき可能性を示唆するものとなっています。私はこの論文を評価したいと思います。子どもを望むHIV患者の女性には、母子感染が不安の種となっています。感染リスクの高くなる条件が明らかにされれば、感染リスクを低くすることもできるようになります。そういう意味でも有益な論文です。Mostadの研究意図もこのあたりにあるのでしょう。
 ひるがえって、近藤論文ではどうでしょう。近藤論文では、HIV患者の女性が感染をまき散らす存在として書かれています。このような書き方は不当なものです。HIV患者の女性にピルを必要とする方もいます。ピルは避妊のためだけに使われるのではありません。月経困難症のHIV患者がピルを使ったとしても、それで感染が広がるわけではありません。なぜ、「感染の拡大を招く可能性があるという視点から検討されるべき」なのか、全く理解できません。
 HIVの患者さんへの差別を助長するような情報を「正確なリスク情報」といって恥じることのない神経に怒りを覚えます。

Cピルユーザーに対する偏見の助長は許されない!

 ピルを服用していることを誰にも言えないピルユーザーは少なくありません。なぜでしょう?ピルに対する偏見が世間にあるからです。ピルユーザーは「好き者女」でも、性感染症患者でもありません。近藤論文は、「ピルと性感染症やエイズとの関係は、単に性道徳の乱れを招く恐れがあるという意味(だけ)ではなく」と書いています。近藤論文は、ピルユーザーは乱れた性道徳をもつ女性で、したがって「性感染症やエイズ」にかかりやすいという偏見を前提にしています。性感染症患者やピルユーザーに対する偏見を助長するものといわねばなりません。
 偏見は世間一般だけでなく、医療関係者にもあります。多くのお客さんのいる前で、「ピルで性病は防げませんから、コンドームも使ってください」としたり顔でいう薬剤師がいます。「そこまでしてセックスしたいんですか」というそぶりで患者さんを傷つける薬剤師さえいます。コンドームなしの性交渉がなければ妊娠しません。子どものいる女性は性感染症患者でしょうか?ピルと性感染症を結びつけるのは、女性に対する侮辱です。
 日本では、ピルがエイズを蔓延させるという反対派の口実で認可にストップをかけられた経緯があります。その結果、STDについて周知させることを条件にピルは認可されました。STDについての情報を提供していくことは、もちろん重要なことです。しかし、それをピルの服用とセットにしたり条件にするのは、間違いです。「妊娠はSTDのリスクがあります。STDの予防にはコンドームが有効です」とはいわないでしょう。「性道徳の乱れたピルユーザー」という偏見を助長する近藤論文とそれを広めるのに手を貸してきたシグマの責任は重大です。
 HIV患者・ピルユーザー・女性は、少数者であり弱い存在かもしれません。だからこそ、私は最大限の気配りを心がけています。近藤論文に見られる弱者に対する傲慢な姿勢は、まさに差別者のそれであり、厚かましくも「国民のため」などいう資格はありません。

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【2】副作用における厚生省報告の問題点(5)次世代への影響

 妊娠中の曝露による影響として、性転換例を挙げているが、その他、妊娠初期にピルを服用すると、先天性四肢形成不全の相対リスクが23.9となる。

 また、器官形成の臨界期に、性ステロイドに被曝すると、形態形成遺伝子の発現を抑制し、子宮などの形成不全を起こさせるという最近の研究から、分子レベルにおける影響を考える必要がある。

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【2】副作用における厚生省報告の問題点(6)副効用

 卵巣癌の予防的効用が挙げられているが、被検者、あるいはコントロールの選び方に問題がある。調査できなかった例が24.5%〜50.9%にのぼっている。

 「中間とりまとめ」では卵巣癌の相対リスク0.6〜0.2(服用期間が長いほど低い)、「意見書」では、胚細胞タイプの卵巣癌では相対リスク1.6、45歳末満の服用者のオッズ比1.4、又「中間とりまとめ」では、ピル服用により、卵巣癌の遺伝子変異を有する女性に対しても、予防効果を示したとしているが、この引用文献中の「生存している卵巣癌の患者だけを調査対象にしたことで、もしピルの使用が卵巣癌でのより高い死亡率と関連しているならば、この選択はピルの予防効果を過大視することになる」との記述を除外して、予防効果のみ記しているのは、読むものをミスリードする。

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【3】日本の臨床試験における問題点

 医学雑誌などにも、日本の低用量ピルの臨床試験が、5000人を被験者にして行ったと書かれているが、その試験内容には大きな問題がある。
(1)成分別、製剤別の試験を行っていない

 ピルの成分であるプロゲスチンの種類や量が、各々の製剤毎に異なっているにも関わらず、一括した評価をしている。特に第3世代ピルについては、血栓症のリスクを更に高めるとされているため、ドイツでは使用に当たっての制限が出され、英国でも処方上の注意勧告が出されている。今回申請中のマーベロン注2)はノルウェーでは「他の避妊薬を使うことが適当でない場合を除いて」処方をしないよう通達が出されている。このような危険性がある薬剤であれば、尚更個別の安全性や有効性の評価がぜひ必要である。

(2)追跡調査数や血液検査率の低さ

 性周期の回復を調査している国内第3相臨床試験の問題として、成分の異なる薬剤を同列に論じている上に、調査数が被験者の2〜5割にすぎないのに、90%以上が90日以内に自然月経の再来と結論している。

 ピルは米国の添付文書で、インスリン感受性を30〜40%低下させるとあるが、国内の臨床試験では、空腹時血糖、糖負荷試験を非常に少人数(解析対象者の数%)しか行っていないのに異常が認められないとしている。他の外国文献で、服用が長くなるほど耐糖能の異常を示す割合が増加している。

(3)「中止、脱落」者の多さ

 この臨床試験では、中止や脱落した者が非常に多い。被験者に適切なインフォームドコンセントが行われていないのでないか? 中止や脱落の原因なども明らかにすべきである。 

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【4】内分泌攪乱物質としての問題点

 ピルは、エチニールエストラジオールというジエチルスチルベストロール(DES)の20倍の効力をもつエストロゲンを含んでおり、内分泌撹乱物質そのものである。

 最近、動物実験の結果から、内分泌攪乱物質は、濃度と反応が「逆U字型反応」を示すといわれており、従来の毒性評価では測られないことが判ってきた。今まで超低濃度域の実験結果は、バラツキが多く用量依存性がないとして切り捨てられてきたが、その結果を見直す必要があるとされる。この観点から、エストロゲン製剤であれば、なおさらのこと、過去の試験結果をもう一度点検して、新しい試験方法で検討し直すことが、ぜひ必要である。

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国民のための薬学はいかにあるべきか

 これほどのリスクがある薬剤を、病気でもないのに毎日服用するのは、女性にとって、大変な負担である。推進派の女性達にも正確なリスク情報を伝えていくことが重要である。

 欧米でも、最初は女性解放の一環として、夢の避妊法として歓迎されていたピルが、現在ではさまざまな副作用を持つ危険な薬剤としての認識が、フェミニズム運動の中に広がり、効果と安全性、継続可能性などから、以前からの伝統的避妊法が主張されてきている。

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このページに寄せられたご意見

2002.01.16近藤和子氏メール
ruriko 様    
  まず、討論を行なうのであれば、こちらが実名、立場を明らかにしている以上、
貴方も匿名ではなく、実名や立場を明らかにするのが筋と考えます。
貴方が匿名にしなければならない理由は、HP上で拝見しましたが、
私が権威という肩書きや社会的権力には無縁の一薬剤師である以上、
貴方が、実名や立場を明らかにすることにより、特別に不利益や不都合を
蒙るとは考えにくく、到底納得できるものではありません。
 ただし、貴方がこの質問書を匿名で、もう既にネット上に公開しているため、
以下のような回答のみを出しておきます。
 
 私が機関誌に発表した論文は、99年3月に武田玲子医師にお会いした際に、
厚生省の「中間とりまとめ」に対する「要望書」よりも新しい資料として、
機関誌に発表することを承諾され、その時点で話された内容もまとめて紹介しており
ます。
その後、その資料を下敷きとして2000年3月に、「ピルの危険な話」が
「エコロジーと女性」グループから、出版されています。
 この原資料(99年3月)と、「ピルの危険な話」では、書き方などで、
本の方が詳しくなっている点、微妙な違いが見られますが、内容そのものは、
この本の第三章「海外における低用量ピル副作用被害」とほぼ同じものであり、
貴方のいうような歪曲や脚色はしておりません。
ただ、「第3世代ピル5種類で、29人の死者…・」については、私の論文中の
表1(本の中では、表2)の50名の死亡者の内訳から、第3世代とされる◎印のみの数

合計したものを私が書いたものです。
 しかし、この原資料を元に紹介した以上、その内容はあくまで私の責任であり、
「エコロジーと女性」には、この論文に対する責任は全くありません。

近藤和子

【rurikoの返信メール(その1)】
お気持ちはごもっともと、理解いたします。
実名について。
個人の著作物に付される「著作者名」は、
実名であることが多いかもしれませんが、
実名でなくてはならない必然性はありません。
「近藤和子」のお名前が実名であるかどうかは、
第三者の知り得ないことです。
小説家がペンネームを使うのはけしからん、
ということにもなりません。
戸籍上の本名でなくて、
たとえば旧姓で論文を執筆することも行われています。
「実名」が戸籍上の本名を意味するなら、
どうしてそのような必要があるのか理解できません。
立場について。
私は立場を明確にしているつもりです。
あるいは、職業という意味でしょうか?
肩書きという意味でしょうか?
学歴資格という意味でしょうか?
無職・無肩書き・無学歴・無資格の名もなき一市民と名乗れば、
納得していただけますか?

> ただし、貴方がこの質問書を匿名で、もう既にネット上に公開しているため、
> 以下のような回答のみを出しておきます。
「質問書」という形は取っていません。
公開しているものは、意見表明あるいは論評です。

> この本の第三章「海外における低用量ピル副作用被害」とほぼ同じものであり、
> 貴方のいうような歪曲や脚色はしておりません。
時系列に並べると、
@「要望書・意見書」→A「近藤論文」→B「ピルの危険な話」
となります。
この事実をもとに論評しています。
ABに類似があれば、AがBに影響を及ぼしたと考えざるを得ません。
Bの公刊前にAの作者がBの内容を知っていたとしても、
それは第3者である私の関知しないことです。

> しかし、この原資料を元に紹介した以上、その内容はあくまで私の責任であり、
> 「エコロジーと女性」には、この論文に対する責任は全くありません。
「近藤論文」に対する論評という形です。
この論評は「エコロジーと女性」の責任を追及するものではありませんし、
そのような書き方にもなっていないと思います。

【rurikoの返信メール(その2)】
転送された近藤さんのメールを読んで、
すぐにお返事を書きました。
しかし、「私が機関誌に発表した論文は、・・・」以下の部分については、
実は趣旨がよく理解できませんでした。
さきほど読み返してみましたが、
やはりよくわかりません。
私に事実関係の誤解があった部分だけは、
訂正しておきました。

趣旨がわかりにくいという意味。
@
> (私は)貴方のいうような歪曲や脚色はしておりません。
(=歪曲や脚色は「エコロジーと女性」の行ったもので、私が行ったものではな
い)
A
> しかし、この原資料を元に紹介した以上、その内容はあくまで私の責任であり、
> 「エコロジーと女性」には、この論文に対する責任は全くありません。
当然過ぎるほど当然のことをお書きになっているように思えるのですが、
私に誤解があったり理解できていないことがあるのでしょうか?

Aの「しかし」を「なお」に置き換えてみると、
趣旨は@にあるということで理解しやすいのですが。
もっとも、そのように理解すると、
Aの「私の責任」の意味が不明瞭になってしまいます。
理解力が乏しくて申し訳ないのですが、
よろしければわかりやすくご説明下さい。

なお、歪曲云々については、
【事実】と【説明】の間の食い違いについていっているのであり、
近藤さんの【説明】と「エコロジーと女性」の【説明】の間の食い違いについていっているので
はありません。
この点も誤解のないようにお願いします

2002.01.19近藤和子氏メール
Ruriko 様

貴方の意見書に対しての私の回答が、判りにくかったとのお返事を頂きましたが、私も
貴方の指摘される、歪曲、脚色とは何を指すのかが全く理解できずにおりました。
しかし、やっとお互いに原著としているものが、大幅に食い違っていることがわかりましたので、以下のような回答をお送りいたします。
ただ、いまだに貴方が匿名であることから、このお返事をもって最後としたいと、考えております。

まず、「エコロジーと女性」の武田医師の手渡された資料には、Department of Health MEDICINES CONTROL AGENCY(MCA)の Epidemiology Unit Post-Licsensing DivisionのMorell Davidから、出された報告内容(英文付)を、「エコロジーと女性」の吉田さんが直接翻訳しておりました。
私は、貴方が云うところの、アメリカのプロライフ団体「ALL(全米いのち連盟)」の出している、原著及び翻訳は見たことがありません。

  【1】英国での低用量ピルに関連した死亡と集団訴訟

   以下の文中*印が近藤の回答
(1)参照文献 

*「エコロジーと女性」の入手した資料は、上記のもので、英文もついていました。

(2)データ期間 

*上記資料では、英文中「January 1994 to December 1997」となっております。翻訳は間違いではありません。

(3)研究デザイン 

*イエローカードの報告そのものは、疑われる副作用(suspected adverse reaction)を全て報告することになっており、因果関係を示す必要性はありません。
それらのデータを、保健省のMCAが統計的にまとめて、因果関係があると判断した場合に報告しています。

(4)ピル服用が疑われる事例が含まれている

* この報告書でも、「処置期間と処方日時に関する情報は、イエローカードには、必ずしも記載されていないことがあり、入手できていないケースもある」と述べられていますが、記載されているケースから、判断せざるを得ません。
* 貴方のおっしゃるような可能性も否定は致しませんが、個々の情報については、今のところわかりません。
* イエローカードは個々に診断を下す医師が、たまたまピルとの関連性を疑って報告していると考えられ、疑いをもたれない場合の方が多いとも考えられます。

(5)疫学調査結果との整合性

* 欧米各国には、イギリスのように、60年代からのイエローカードによる副作用報告や、その後の医薬品安全委員会による処方イベントモニタリングのような、使用後医薬品の監視機構が完備して、その副作用の統計がきちんと出されている国は、他にはないと考えられます。従って、むしろ英国の疫学調査の方が、他の各国の統計より信用性が高く、世界中から信頼されているのではないでしょうか?

(6)因果関係 

* この件では、既に回答しております。私の論文中、表1の50人の死亡者中、第3世代とされる薬剤5種類のみの合計は、29人となります。

(7)第3世代ピル 

* 発売予定(99年当時)の2成分とは、Marvelon(日本名も同じマーベロン)と、Logynon(成分が同じ処方である、日本名トライディオール、トリキュラー、リビアン、アンジェの4製品)を指しています。
* Cilestは第2世代ピルに重複して、発売されたのかもしれませんが、成分的には第3世代Gonane系のnorgestimate (250μgと多めですが) が含まれているため、第3世代とするのが妥当ではないかと考えます(Ethinyl estradiolが50μg以下、Gonane 系Progestogenが500μg以下の含有のため)

(8)他のリスクファクター

* 私の資料は最初に上げたものであり、保健省のMCAが自らの報告について、解釈する場合の注意点をあげているに過ぎません。
* 英国の保健省がアメリカの団体の調査結果に、コメントを出さないのは当然です。
* 貴方の原著としている団体ALLが、『狂信的なカソリック原理主義者』であるならば、保健省のこの報告をまとめる段階で、自分たちの団体の意にそうように、故意に保健省のコメントを除いたと考える方が自然です。
* 自殺者が含まれていることについては、人為的なホルモンの失調を行なっていることから、鬱傾向が出るのは当然と考えられます。私は、精神科疾患に接することの多い職場なので、この薬に限らず、もっと薬剤に起因する精神疾患が考慮されるべきではないかと考えております。

(9)正確な情報と薬害の防止

* 個人の論文にどのような感想を持つかは、読む人の自由ですが、少なくとも論文の相手に、理性ある討論を呼びかけるのであれば、相手を誹謗中傷するような言葉はつつしむのが礼儀と考えますが、いかがでしょうか。
* 私は研究者ではありませんが、集団内の研究者がその論文を容認していると勝手に判断して、研究者としてのセンスを云々するのは、もっての他ではないでしょうか。

【rurikoのコメント】

@2つの調査が存在するのか?
 ALLは98年12月8日付で、イギリス保健省データの分析結果を報告しています。これとは別にMCA独自の調査が存在するのでしょうか?
 私の知る限り1999年5月にイギリス政府は、ピルとの関係が疑われる死亡例の調査結果を発表しています。この調査は1989年5月20日から1999年5月20日までを対象とする調査で、調査結果もALLのものとは大きく異なっています。
 仮にMCA独自の調査が存在したとしましょう。2つの調査は、どちらも調査対象期間の始期は1994年1月であり、リストアップされた50ケースは完全に一致したということになります。タイトルも"Deaths associated with the birth control pill in England 1994-1997 "と「ピルに関連した死亡例(1994.1 - 1997.12)の死因と服用していたピルの成分」で酷似しています。このような偶然の一致が起こりうる可能性は、ほとんどないのではないでしょうか?
 2つの調査が存在すると考えるよりも、近藤さんがご覧になった資料は2次資料であったと考える方が自然のように思います。「保健省のMCAが自らの報告」として公表しているものかどうか、ご確認願いたいと思います。

A資料の性格
 「保健省のMCAが統計的にまとめて、因果関係があると判断した場合に報告しています。」とのご指摘です。MCA独自の調査であるかどうかの問題とも関係しますが、お使いになった資料はMCAが因果関係があるとの判断をしているのでしょうか?
 また、「従って、むしろ英国の疫学調査の方が、他の各国の統計より信用性が高く、世界中から信頼されているのではないでしょうか?」とのご指摘は、近藤様のいう「MCA独自の調査」にも当てはまるのでしょうか?
 私の知る限り、この調査は単にリストアップしただけで、統計的処理が加えられているものではありません。疫学調査の専門部局が、この調査から因果関係ありとの結論を出したとはとても考えられません。

B第3世代ピル
 近藤論文の「この中には」の「この」は、第3世代ピルを指すものと理解しておりました。今一度読み返してみましたが、やはりそのように読めます。私の日本語能力に問題があるのでしょうか?
 なお、Cilestについては、イギリスで第3世代ピルの規制が行われた際に、規制リストから除外されていたことはご存じの通りです。第2世代と第3世代の血栓症リスク比較においては、Cilestを第2世代ピルの扱いにするのが一般的です。

C事実の証明
 近藤様はピルの危険性についての正確な情報を伝えなくてはならないと繰り返してきました。このことについて、私がお尋ねしてきたことは、その伝えている情報は科学的に検証された現実のリスクを示すものなのかということでした。近藤様はいうところの「正確なリスク情報」がまさに事実であることを示すべきです。
 ところが、近藤様のお答えは「私が見た情報はこうである」という弁明に終始しています。近藤様のご覧になった情報が、「正確なリスク情報」であることを証明する義務を放棄しているのではないでしょうか?

D礼儀
 近藤様については失礼な書き方をしています。率直にお詫びいたします。お許し下さい。
 ただ、まだ書いてない論点を含めて、近藤論文はあまりにずさんすぎるのではないでしょうか?それにもかかわらず、「推進派の女性達にも正確なリスク情報を伝えていくことが重要である。」と宣言されています。これは「推進派の女性達」は無知であり、薬害を広めているといわんばかりに読めるのです。この点について、ご理解いただければ幸いです。
 公開に際して、シグマへの直接的な言及は避けるように配慮いたしました。ただ、近藤氏の言説を広め続けていることについては、問題を感じています。別の項目で、愚見を述べる予定です。
 

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