血中ホルモン濃度でピルを理解する

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ホルモン動態を知らずしてピルを語るべからず
ピルで排卵を抑制するには、ピル服用中であることが脳に伝えられねばなりません。
脳はピル服用中であることを血液中のホルモン濃度で感知しています。
ピル服用中に血液中のホルモン濃度がどのように変化するのか知っていると、
ピルを理解するのに役立ちます。
日本の産婦人科医の中には、
海外では通用しない奇妙な新説を唱える方が後を絶ちません。
ピルユーザーをサポートすべき専門家が、
ピルユーザーを惑わす発言を繰り返しています。
それらの発言の多くは、
ホルモン剤の血中動態についての無知に起因しています。
不勉強な専門家の言説から身を守るために、
ホルモン剤の血中動態について理解しておきましょう。
血中ホルモン動態を理解するために
下の2つの図と、QアンドA式の説明を見比べながら理解するようにしましょう。


 


Q ホルモン濃度が一番高くなるのはいつですか?
 

A ホルモン濃度が最も高くなるのに要する時間をTmaxといいます。
Tmaxはエストロゲンも黄体ホルモンも、1時間数十分程度です。
Q 服用直後にピークになるのはなぜですか?
 
A ピーク時にはまだ吸収は完了していません。
吸収が続いているのにピークをつけてしまいます。
これには代謝が関係しています。
腸で吸収されたホルモン剤は、肝臓に運ばれます。
そして、肝臓で代謝作用を受けます。
肝臓に大量のホルモン剤が運び込まれると、
肝臓は懸命に代謝しようとします。
量が多くなればなるほど代謝作用は強くなります。
吸収と代謝のバランスが取れたところがピークとなります。


Q 濃度のグラフが曲線になるのはなぜですか?
 

A ピークの少し後では急ですが、やがてだんだん緩やかになります。
上に書いたようにホルモンの量が多ければ多いほど、
急激な代謝作用が働きます。
門脈を通して大量のホルモンが運ばれているときには、
血中のホルモンも急激に代謝されます。
Q ホルモン剤の量が多くなればなるほどピークの値は高くなりますか?
A ピークの値は、Cmaxといいます。
Cmaxは用量が多くなればなるほど高くなります。
ただ、無限に高くなるわけではありません。
また、用量を2倍にすればCmaxが2倍になるわけではなく、
2倍より小さな値となります。
これは量が多くなればなるほど、代謝作用も強くなるためです。
エチニルエストラジオールの図で、
低用量(緑)と1/2錠分割服用(黄緑)のグラフを較べてみてください。
1/2にしても、Cmaxは1/2にならずに20%程度しか小さくなっていません。
Q 1/2錠分割服用では、避妊効果が怪しくなると書かれていましたが?
A 低用量ピルを1/2錠ずつ12時間間隔で服用しても避妊効果に問題はありません。
12時間後の血中濃度は、1錠服用24時間後の濃度よりも明らかに濃い濃度となっています。
このことは、どのような種類のエストロゲンについてもいえますし、
どのような種類の黄体ホルモンについてもいえます。
Q 血中濃度が低くてもピルの効果はありますか?
 
A 一定レベル以上に保たれていれば、排卵抑制効果に問題はありません。
排卵抑制効果が得られる最低水準を有効限界といいます。
そのレベルは、製剤によって異なります。
低用量ピルのエチニルエストラジオールは、
服用36時間後に有効限界に達することがあるので、
12時間の飲み忘れまで避妊効果が保証されます。
第一世代ピルに使われているノルエチステロンは48時間後には、
検出限界以下となります。
24時間の飲み忘れでも避妊効果は影響を受けないと、
日本の産婦人科医だけが言っています。
12時間以上の飲み忘れでは、
有効限界以下になっている可能性があることを頭に入れておきましょう。
Q 日によって血中濃度のピークとボトム(24時間後)の値は異なりますか?
 
A 1日目の24時間が経過した時点で、血液中にはまだホルモンが残っています。
2日目の服用では、それに新たに追加される形になりますから、
2日目のピークやボトムは1日目のそれよりも高くなります。
エストロゲンについて言えば、4日目くらいまでは少しずつ高くなっていきます。
それから後は、ピークもボトムも水平になります(定常状態)。
Q ピルの種類によって、血中濃度の変化のしかたは異なりますか?
 
A 基本的なパターンは同じですが、代謝されるスピードが違います。
ピーク(Cmax)の値が半分になるまでに要する時間を半減期(1/2β)といいます。
第一世代ピルに使われているノルエチステロンの半減期は、6時間余りです。
低用量ピルに使われているエチニルエストラジオールの半減期は、12時間弱です。
第2世代ピルに使われているレボノルゲストレルの半減期は、約22時間です。
Q 半減期の短い製剤にはどのようなメリットがありますか?
A ノルエチステロンは半減期の短い薬剤ですが、
第一世代ピルでは、休薬期間の早い時期に消退出血が起きる傾向があります。
ノリニールやシンフェーズは、
この特性を利用して休薬2日目に消退出血が起きるように設計されています。
反面、半減期が短いために1錠の用量を多くする必要があり、
これはデメリットといえるでしょう。
Q 半減期の長い製剤にはどのようなメリットがありますか?
A 最大のメリットは用量を少なくできることです。
レボノルゲストレルが使用されている第2世代ピルでは、
第一世代ピルと較べて黄体ホルモンの用量が少なくなっています。
反面、1クルー中の黄体ホルモン濃度の変動幅は大きくなります。
Q 黄体ホルモン濃度の変動で基礎体温は変化しますか?
A 基礎体温は黄体ホルモン濃度と関係しています。
しかし、黄体ホルモン濃度がストレートに反映されるものではありません。
自然の排卵後の黄体ホルモン濃度は、2-25ng/mLの幅で大きく変化していますが、
それにつれて基礎体温が変化するわけではありません。
オーソ777 や第2世代4製品では、
黄体ホルモンが3段階に増えていきます。
しかし、血中濃度のピークやボトムが3段階に高くなるわけではなく、
スロープ状に高くなっていきます。
1相性のピルでも緩やかなスロープ状に高くなります。
黄体ホルモン濃度がスロープ状に高くなっても、低温相と高温相に分かれることがないのはいずれも同じです。
基礎体温で、ホルモン濃度を推測することは、
自然の排卵後も出来ませんし、
ピル服用中も出来ません。
 
Q ある本に相互作用のある薬を服用したときは、基礎体温を計って排卵の有無を確かめるとよいと書いてありましたが?
 
A ピル服用中の黄体ホルモン濃度は、スロープ状に高くなっていきます。
この変化は基礎体温に反映されないのが普通です。
相互作用薬のために血中濃度が低くなっても、
すぐに基礎体温が低くなることはありません。
基礎体温で排卵の有無を確かめるのは無意味です。
最も悪質な本には、基礎体温が上昇した場合には服用を中止するように書かれています。
これは明らかに妊娠のリスクを高める服用法です。
ピル服用中の基礎体温は、一定しません。
何かの具合で上昇がみられても、
排卵のためとはかぎりません。
そこで服用を中止すると排卵に対して無防備になってしまいます。
相互作用薬で排卵リスクが高まっているのに、
わざわざそのリスクを高めるようなことは絶対にしないで下さい。
Q 24時間以内の飲み忘れなら避妊効果は持続するのですか?
A 飲み忘れから12時間を超えると、避妊効果は持続しないと考えるべきです。
日本のガイドラインでは、
「1日の飲み忘れ」ならば避妊効果が持続するような書き方になっています。
しかし、多くの国では避妊効果が保証できるのは、12時間の飲み忘れまでとされています。
服用から36時間までなら、有効限界が維持されています。
36時間を越えると血中濃度が有効限界以下になります。
これが12時間までなら避妊効果が保証される根拠です。
ちなみに、服用48時間後にはノルエチステロンは検出限界以下になっています。
Q ピルを21錠目から逆に飲んでいったとき、避妊効果はどうなりますか?
 
A 逆順に飲んでも、有効限界は持続的に維持されます。
したがって、避妊効果には問題が出ません。
しかし、ピルの種類によっては不正出血が起きやすくなります。


Q 新しいシートの飲み始めが数時間遅れても、避妊効果が無くなると書かれていましたが?
 

A 7日ルールの7日間とは、血中濃度が持続的に有効限界以下/以上の7日間です。
低用量ピルでは、21錠目の服用から36時間までは、有効限界以上が維持されています。
つまり、12時間のオマケが付いているわけで、
この12時間のオマケは次のシートの1錠目の飲み忘れに使うことが出来ます。
したがって、低用量ピルでは新しいシートの飲み始めも、12時間までなら許容されます。
中用量ピルではオマケは24時間となります。
超低用量ピルではほとんどオマケはありません。
Q 1週目の飲み忘れで排卵のリスクが高くなるのはなぜですか?
 
A 理由は2つあります。
1つめの理由は、休薬期間中に卵胞が成長しているからです。
服用を始めると卵胞は小さくなっていきます。
1週目にはちょっと油断すると、この卵胞のすり抜け排卵につながってしまいます。
2つ目の理由は、第一週目(特に4日目まで)は血中濃度のボトムが低くなっています。
そのためアクシデントの影響を受けやすいのです。
Q 普段は朝の10時に服用しています。昨日は2時間遅れの12時に服用しました。
今日の朝、飲み忘れて夜の11時に服用しました。
これは13時間の飲み忘れと考えるべきですか?
 
A 昨日の服用時間から数えて、35時間目に服用しています。
12時間以内の飲み忘れですので、有効限界を下回っていません。
逆に昨日だけは9時に服用した場合には、
9時から起算して36時間までが有効限界が維持されている時間となります。
Q PMSの改善に分割服用が有効なのはなぜですか?
 
A 分割服用では1日のピークは低くなり、ボトムは高くなります。
つまり、血中濃度の変動幅が小さくなります。
血中濃度の急激な変化を避けることが、PMSの改善に効果的なことがあります。
なお、分割服用では排卵抑制効果が期待できないと述べている産婦人科医がいます。
ピルの普及を妨害する意図があるのか、
無知なのか、そのどちらかだと思われます。
 
ピル服用中のホルモン動態を理解していると、さまざまな問題や疑問に答えを出すことが出来ます。
少し難しい話しかも知れませんが、理解するよう努力しましょう。
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