避妊薬ピルの副作用と副効果
血栓症のリスク(6)

 

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血栓症のリスク評価とガイドライン


ピルに限らず、薬品にはメリットとデメリットがあります。
まず一般論。
薬は基本的に毒です。
ただ毒性(副作用)よりもメリット(効果)の方が大きいものを薬と考えます。
少々副作用がある薬でも抗ガン効果があれば、
毒ではなく薬と考えます。
普通の薬なら医学の専門家がメリットとデメリットを天秤にかけ、
判断することができます。
ピルには普通の薬とは違う2つの特徴があります。

一つは効果に関係しています。
ピルに避妊効果があることについては、議論の余地がありません。
しかし、ある人にとって避妊はメリットといえないものです。
彼らから見れば、ピルはメリットはなくて副作用だけがある毒です。
一方、ある人にとって避妊はとても重要なメリットです。
避妊の価値は医学的判断になじまない個人の価値観と関係しています。
この点が、ピルが他の薬品と異なる点です。
別のページに、ピルが相談する医療の形を切り開いたと書きましたが、
このことが理解されるにはまだ時間がかかりそうです。

ふたつ目にピルの副作用の性質が関係しています。
これを血栓症について説明します。
当サイト旧版では、ノンピルユーザー・ピルユーザー・妊婦の血栓症リスクについて書きました。
妊婦の血栓症リスクはピルユーザーよりも4倍程度高くなります。
しかし、それはピルを服用して妊娠を避ければ血栓症リスクは1/4に減少する、
という意味ではありません。
そのようなニュアンスで書かれている文章をよく見かけますが、
正確ではありません。
妊娠するとすぐに血栓症リスクが4倍に高くなるわけではありませんし、
妊娠で最も血栓症リスクの高まるのは産褥期です。
ですから、ピルの服用と妊娠の血栓症リスクを単純に比較するのは無意味です。
ピルの服用と妊娠の血栓症リスクが比較される意味は、
別の所にあります。
具体的に説明してみましょう。
深部静脈血栓症の発症には遺伝的素因が深く関係しています。
現在、深部静脈血栓症を発症する患者の1/2から2/3は遺伝的素因をもっています。
研究が進めばその比率はもっと高くなるでしょう。
100人の血栓症素因をもっている人がいるとします。
その内30人はピルを服用し、70人はピルを服用しなかったとします。
ピルを服用した素因保有者の20%で血栓症が発症するとすると、
6人が発症します。
ピルを服用しなかった70人とピルを服用して発症しなかった24人の合計94人が妊娠して、その80%が発症すると75.2人となります。
相対リスク4倍とはこのような関係です。
上の例では、遺伝的素因を持つ100人中81.2人が発症します。
遺伝的素因を持つ女性のピル服用をゼロにしても、
彼女たちが妊娠するのなら発症者は80人です。
81.2人と80人でほぼ差がないのがご理解いただけると思います。
この関係は遺伝的素因のない女性についても言えますし、
数字をどのように変えても言えます。
ピルの服用で発症が早まることはあっても、
いつかは妊娠する以上発症率そのものにはほとんど差がないのです。
このように説明すると、81.2人と80人では差があると考える方も出てきます。
では、81.2人と80人では、80人の方がよいのでしょうか?
それは実はかなり微妙です。
上の例でいうとピルを服用して発症した6人ですが、
彼女たちはその後妊娠出産することもあります。
その際、深部静脈血栓症に対する管理がなされます。
あらかじめ、深部静脈血栓症のリスクが判明したからできる管理です。
このような点まで含めて考えた上で、
ピル服用による血栓症リスクを考える必要があります。
日本のピルのガイドライン作成者に、
このような認識がないことは明らかです。


このページのはじめに、毒性(副作用)とメリット(効果)の天秤ということを書きました。
日本の深部静脈血栓症は、欧米と較べるとかなり少ないと推測できます。
そうであれば、欧米と同じ年齢制限のラインでよいのかなどの疑問も出てきます。
もし、日本の深部静脈血栓症発症率が欧米より3倍高かったなら、
日本のガイドライン作成者はどのように判断するでしょうか。
欧米の基準をそのままもってきそうなところが怖いところです。





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